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白雪乙鶴

10月23日 県立芸大奏楽堂

第20回琉球芸能定期公演で、創作組踊『白雪乙鶴』が上演された。グリム童話の『白雪姫』をモチーフにした親しみやすい作品。脚本・高宮城実人、作曲・伊礼俊一、振り付け・阿嘉修。芝居風の演技や紗幕、二段構造の舞台装置などを取り入れた親しみやすい作品を芸大・大学院生らが生き生きと演じた。

2003年(『白露涙還の巻』として)、2005年(『白雪乙鶴』に改題、動物の妖精が登場するなど一部リニューアル)以来の再再演になる。沖縄市民会館から、芸大奏楽堂に場所を移し、舞台がせまくなったこともあったのか、乙鶴を守る鳥や家臣などの登場人物が絞り込まれた。結果、「白雪姫」の筋立てに従いながら、人物の心理や行動の論理が組踊にのっとっていることや、『歌たい舞うたい 干支せとら』(嘉数道彦)『玉露の妖精』(西村綾乃)などの創作組踊の先行作品としての性格も浮かび上がった。




『白雪乙鶴』と『白雪姫』の物語を簡単に比較してみたい。
おもな登場人物
『白雪姫』→『白雪乙鶴』
白雪姫→ 瑠璃華城王女「白雪乙鶴」 
女王→ 瑠璃華城女按司「朱陀麗金」
魔法の鏡→ 鏡の精
狩人→瑠璃華城守役「田平大主」
7人の小人→山羊・犬・兎・豚・亀・鶏・蛇の精
王子→黄金森城若按司「秀徳亀松」

あらすじ
『白雪姫』
継母は白雪姫の美しさに嫉妬し、狩人に白雪姫を森に連れて行き殺すように命じる。狩人は、白雪姫を不憫に思って殺さず、森に置き去りにする。白雪姫は7人の小人と暮らすようになる。しかし、魔法の鏡の言葉で白雪姫が生きていることを知り、自ら、腰ひもや毒の櫛を使って殺しに来る。そのたびに小人によって生き返る。最後に毒りんごを食べた白雪姫は息絶える。通りがかった王子が白雪姫の棺を運ばせようとすると、毒りんごのかけらが喉からとれ、息を吹き返す。王子と白雪姫の結婚式に呼ばれた女王は、焼けた鉄の靴を履かされ殺される。

『白雪乙鶴』 でも朱陀麗金は乙鶴の美しさに嫉妬する。しかし、今回は配役の印象もあって、按司の後妻との立場から、乙鶴があとを継いだらわが身はどうなるのかという猜疑と不安の要素が表に出てきていた。朱陀麗金に邪険にされる乙鶴は親孝行しようと努めているのにと嘆くのは組踊の継母物( 『孝女布晒』など)に通じるように思われる。乙鶴殺害を命じられた田平大主は、『手水の縁』の西掟のように、君命と情の間に揺れながら、乙鶴を逃がす。乙鶴が生きていることを知った朱陀麗金は、南の商人に化け、疲れをいやす手水を乞い、その礼と称して毒の白桃を乙鶴にわたす。息が絶えたような乙鶴を救いかねた動物の精は、乙鶴の許嫁である若按司に助けを求め、若按司の涙の露を受けた乙鶴は蘇生する。動物の精との、『執心鐘入』のような立ち回りもある。朱陀麗金は川に落ち死ぬ。登場人物たちは、水の力で成仏するだろうと話し、めでたく終わる。

「手水」「涙」「川」と3種類の「水」が重要な役割を果たしているのも印象に残った。玉水を尊ぶ精神が表れている。「手水を与える」=「愛の約束」という構図を外しているようで、乙鶴の人間性を、大切なもの(水)を渡すという形であらわした。また、涙と川の使い方も水の霊力への信仰あればこそだろう。

流麗な箏を使った「をなじゃら手事」にはじまる音楽も、場面、場面を盛り上げる。
森の動物が「中作田節」「泊高橋節」「芋の葉節」「蝶小節」などに乗って登場する所作や、大切なものを守るために、外界の悪に立ち向かうところなどは「干支せとら」を思わせ、今回は登場しなかった鳥たち(『白露涙還の巻』では小人に相当)は 『玉露の妖精』のサワフジの精たちの立ち居振る舞いに示唆を与えているように感じた。

出演者は以下の通り。それぞれ真面目に演じていた。芸大以外の舞台で見かける人とそうでない人では「舞台映え」「花」の面で差があるのは仕方がないのかもしれない。しかし、鏡の精を嘉数道彦が演じたのは多少残念だった。間の者的な役どころで、コミカルな動きや台詞で場面に明るさをもたらす鏡の精は、物語の筋の上でも、盛り上げ役としても重要であり、嘉数道彦にはうってつけで、実際すばらしくこなしていた。
大学の定期公演では学生の活躍を見たかった。学内演奏会ではなく、入場券を発売しての定期公演で、一定のクオリティーを保つには、嘉数が必要だとの判断があったとすれば、理解できるが、それは学生の層の薄さを表しているように思える。初演時から「「若者ぬちゃー、てーげーするむんな」(勝連繁雄)と評価の高い『白雪乙鶴』だけに先輩を乗り越える気概とそれを認めさせるだけの力量がほしかった。


【立ち方】瑠璃華城王女 「白雪乙鶴」:浦崎えりか
瑠璃華城女按司「朱陀麗金」:金城真次
黄金森城若按司「秀徳金松」:田口博章
供1:赤嶺麻以子 供2:比嘉千晶
瑠璃華城守役「田平大主」:川満香多
山羊の精:上地美妃 犬の精:西門悠雅
兎の精:仲里綾香 豚の精:上原信次
亀の精:秋田直子 鶏の精:浦崎愛梨
蛇の精:玉城 匠
鏡の精 嘉数道彦
後見:波平 愛
歌三線:大城貴幸、喜納吏一、島袋奈美、平川くるみ、久保田琢 、古波藏正信
箏:宮城紫乃
笛:豊里美保
胡弓:玉城 幸
太鼓:宮里和希
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