はりくやまく

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さかさま執心鐘入 1

新作組踊『さかさま執心鐘入』 11月21日国立劇場おきなわ

作家の柳美里は『芝居の媚薬』(三島由紀夫)の解説で<時が経てば抜け殻でしかない戯曲が図書館の書棚に夢の跡を残すだけだ><芝居というものは夢まぼろしでしかない>と記している。「抜け殻」から<劇場を包む「祭典的な香り」>をどう立ち上らせるのか、役者、裏方、(時には観客も)の努力は大変なものだろう。とくに、演出家に課せられた責任は、想像を超えている。新作組踊『さかさま執心鐘入』では、嘉数道彦がその大役を見事に果たし、劇場を芳醇な香りで包み込んだ。上演中から笑いが絶えず、いつもなら、緞帳が下りるか下りないかのうちに席を立つ観客から、自然なカーテンコールを引きだした。出演者の演技・演奏も良かった。

「喜劇」として書かれたという大城立裕の原作には、「穴」というか舞台化が難しそうだと思わせる部分がいくつかあるのだ。
1、 喜劇なのに後味が悪い
 原作の中で、『執心鐘入』の「宿の女(鬼女)」にあたる「女2」が、『執心鐘入』にもまして徹底的に救われない。それは、笑いの中にペーソスがあるといった類のものではなく、恋に破れた女をもう一度辱め、苦しめる後味の悪いものだ。大城も、後ろめたいところがあったとみえて<女2の悲劇になるのはしかし、これこそ心底からのドラマになったものだと、言えなくもない気がしている>(『花の幻』)としていたのが、<悲劇を繰り返すのは本意ではないので、演出でなんとか補ってほしい>(『華風』11月号)と下駄を預けている。
2、 不要な闖入者の存在
物語の後半、「玉城朝薫」が突然登場し、女2に「運命」を説く。大城自身が「ふざけすぎ」と自覚しているのに、台詞が終わっても退場の指定(と書き)もなく、ほったらかしのまま、脚本は終わる。
3、 繰り返しの単調さ
『執心鐘入』でスパイス的に使われ面白みを出している、こぶしを振り上げての「推参な小僧」が『さかさま執心鐘入』では、何度も繰り返され、おかしみが単調の中に埋没してしまっている。
4、 音曲が重い
 大城組踊の常だが、大節の多用で話の運びが荘重に傾きがちになる。


嘉数をはじめとするスタッフ(演出助手・川満香多、振付・阿嘉修、音楽・仲村逸夫、音楽補佐・高宮城実人)は、これらの「穴」を埋めることに成功した。
1、徹底的な喜劇に仕立てなおした。鬼女として登場した女2を、花笠とチーグーシの似合う美しい女(あるいは成仏した魂)に戻して旅出させた。仲村逸夫の創作曲による総踊りでの幕切れの盛り上がりは祝祭的で、朝薫五番の中で、ただ一つハッピーエンドでない『執心鐘入』の「さかさま」にふさわしい。
2、玉城朝薫は、大湾三瑠が演じた。存在感のある人だけに、後ろを向いて立つことで「いないことにする」のも無理がある。コミカルな演技での中で、上手に出入りしていた。書かれていない所で、場面を膨らます演出の腕の見せ所。
3、詞章の変更は許されなかったようで、これは解消されなかった。
4、詞章とは逆に、曲の変更は自由な裁量に任された(他の大城作品も共通)。中でも、テーマ的位置づけの創作曲は、重々しい声明を思わせる冒頭から、軽快で華やかな盛り上がりの後半へのつながりが心地よい。


(あらすじ)
執心鐘入の物語の後も、鬼女の恨みで寺の鐘が鳴る。座主は鐘の供養をするが、またも一人でに鐘が鳴る。すると、一人の娘が男に追われて寺に駆け込んでくる。座主と小僧たちは鐘の中へ娘を隠すのだが、追ってきた男とは・・・。もう一つの物語が今始まる。
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Comment

No title 

すぐにも、もう一度見たいです。
原作の終わり方だったら、私は納得しない、
いったいどうやって終わらせるつもりだろうと、
思っていましたが、お見事でした。
地謡の方々の顔出しを含め、
カーテンコールがあってとてもよかったと思います。
演出、立ち方、地方、裏方、すべてが
有機的にかかわった、1つの理想を見た気がします。
  • posted by セバ@宜野湾 
  • URL 
  • 2009.11/24 12:39分 
  • [Edit]

Re: No title 

セバさん、お久しぶりです。

本当に楽しかったですね。あんなに盛り上がった組踊ははじめてです。

> すぐにも、もう一度見たいです。

きっと再演がありますよ。

> 演出、立ち方、地方、裏方、すべてが
> 有機的にかかわった、1つの理想を見た気がします。

「十六夜朝顔」が12月23日にあるじゃないですか。
そこでも、きっと理想形が見れますよ。
あと、12月13日は「ウチナー紀聞」http://www.uchina-kibun.com/archives/info.phpで新作組踊特集があります。
必見です!

  • posted by 亀千代 
  • URL 
  • 2009.11/25 01:46分 
  • [Edit]

No title 

ウチナー紀聞情報、にふぇーでーびる。
完全に死角でした。
23日は名護で、27日は「薩摩侵攻」。
追いかける方としては、嬉しい悲鳴です。
来年度も追いかけきれないほど、
舞台があるといいなあと切に願っています。
  • posted by セバ@宜野湾 
  • URL 
  • 2009.11/25 12:52分 
  • [Edit]

Re: No title 

「うれしい悲鳴」 うちあたいします。

その前に、12月20日の平和祈念公園も魅力的です。
抜粋ですが、嘉数道彦、佐辺良和の「万歳敵討」がありますよ。
http://www.peace-museum.pref.okinawa.jp/annai/osirase/image/heiwa_program.pdf

「万歳敵討」は12月5日の宇座仁一、大湾三瑠バージョンも見逃せないはず。
セバさんだったら「島若人の集い」http://musix-okinawa.com/m/ja/wp-content/uploads/2009/10/e5b3b6e88ba5e4baba.jpgですか?
ほんとに、追いかけきれませんね。
来年、とか言ってる暇ないです。v-20




> ウチナー紀聞情報、にふぇーでーびる。
> 完全に死角でした。
> 23日は名護で、27日は「薩摩侵攻」。
> 追いかける方としては、嬉しい悲鳴です。
> 来年度も追いかけきれないほど、
> 舞台があるといいなあと切に願っています。
  • posted by 亀千代 
  • URL 
  • 2009.11/26 00:13分 
  • [Edit]

No title 

うちなーきぶんは新作組踊特集じゃなくて
組踊特集ですよv-8
  • posted by  
  • URL 
  • 2009.11/27 12:52分 
  • [Edit]

Re: No title 

十六夜朝顔と海の天境 がお目当てなので、自分の中では、新作特集なんです!
って、古典も観れるなら、倍楽しみですね。情報、ありがとうございました。


うちなーきぶんは新作組踊特集じゃなくて
> 組踊特集ですよv-8
  • posted by 亀千代 
  • URL 
  • 2009.11/28 01:46分 
  • [Edit]

No title 

あ、URL情報を追加してくださっていたのですね。
本当に、こういう情報はありがたいです。
ミュージックタウン、松田一利さんと嘉数さんのコラボも
興味深いところですが、このイベントがあると知る前に、
国立の「万歳」、チケット買ってしまいました。ダブルヘッダーはちょっと難しいです、残念。

平和祈念公園、1月9日もあるのですね。20日は行けないので、9日を狙いたいです。
  • posted by セバ@宜野湾 
  • URL 
  • 2009.12/01 12:52分 
  • [Edit]

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