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琉球舞踊・組踊・古典音楽を見たり、聞いたり、のメモ

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遁ぎれ、結婚

20日、国立劇場おきなわ

現代喜劇を組踊で上演するという話題作の、2005・2006年に続く上演は、入場券が早々に売り切れる人気だった。復帰前夜のコザを舞台に、ドタバタ劇の中に現代につながる風刺も交えて、観客を楽しませた。興味深かったのは、第1部の琉球舞踊と第2部の「遁ぎれ、結婚」への反応の差。琉舞は「鑑賞」、組踊は「見物」という感じで、観客は後者でリラックスしていた。3月の東京公演ではどのような雰囲気になるのか、反応が楽しみだ。

「鑑賞」を象徴したのは、志田真木の<伊野波節>だった。文化庁芸術祭優秀賞を受賞した昨年の独演会で踊り、沖縄への受賞報告という意味もある演目。ゆっくりとにじるような歩みを見せる。「思なちゃめ」の下手から上手に移動するところでは、普通の人の歩く速さでありながら、走っているように感じられるほどだ。その後右手の花笠を掲げて返すところなども非常に構築的な美しさで、その中で歌詞の情念が燃える。踊り手自身の世界を作り出す力はさすがだ。志田真木の格式高く彫琢された踊りは、舞台の上に巡らせた透明な結界に守られ、独自の高みに飛翔していく。観客には凝視するしかすべはない(あるいは、脱落し意識を手放すか)。「共感」より「感心」の世界だ。いわば、式楽的な踊りだった。(新良幸人さんの地謡で雑踊など踊るときはまた、別の魅力がある)。
 式楽の雰囲気は<黒島口説><貫花>などにも見られた。

第2部の<遁ぎれ、結婚>は、喜劇ということもあって、笑いが絶えず、「昔の小屋の雰囲気」との声もあった。神谷武史、小嶺和佳子、座喜味米子、瀬名波孝子、高宮城実人、知名剛史というハマり役を得て、物語は進んでいく。

〔あらすじ〕
日本復帰を直前に控えた沖縄の遊郭、吉原。遊女を抱えるシマ子の所に、どら息子の正彦が賭博に負けて逃げて来た。借金の始末を親に頼ろうとして親子げんかが始まる。
やくざが正彦の借金の取り立てにやってくると、そこに居合わせた遊女の佐和子が、やくざを見事に追い返す。シマ子はその度胸に感心し、正彦の嫁にとそそのかす。佐和子は、結婚と借金が片付くならばと喜ぶ。そこへ、正彦がすでに結婚の約束をしていたヤマトンチュの女、友美がやって来た・・・。


役それぞれに適任者を得て、ヤマトグチや長唄を取り込んだ物語が生き生きと立ち現われた。履物を履いたままのすり足や、組踊から沖縄芝居(歌劇)への移行はこのように行われたのではないだろうかと思わせる、様式の入り混じりが興味深かった。二階家のセットは、伊江島の<忠臣蔵>や渡嘉敷系の<手水の縁?>で用いられたと聞いたことがあるけれど、普段の組踊には見られないもので、面白い。

どうしようもない男たちと、しっかり生きていく女たちという、沖縄の男女の一典型を投影した人物造形と、日の丸が持つ多様なイメージが、沖縄の現在に通じる。あふれる色気を文庫の帯で引き締めた小嶺和佳子と、やつれた美しさに磨きがかかった座喜味米子が、自分の意思で男を見限りながらも「こうしかならない」という台詞を残したのはなぜだろうか。演出の玉城満は県議でもあり、普天間基地の県外移設を求める決議の行方が混沌とした時期に上演日が重なったことも、奇妙な符合を感じた。

残念だったのは、花道と尾類馬の群舞がなくなっていたこと。華やかさが一挙に失われた。
客席横の扉から出入りしては、せっかくの美男美女の登場・退場が引き立たない。吉原の歓楽街に尾類馬はいなかったかのかもしれないが、浮ついた享楽的な場面があることで、影の部分が強調されていたと思う。次回の上演ではぜひ復活させてほしい。


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Comment

No title 

いやあ、いいものを見たなーと、ずっとニマニマしていました。
初演の頃は沖縄に来たばかりで、こんな世界があることもまだまだ知らず、したがって華やかなじゅり馬を見ていないままなのが、残念です。
今回は東京公演があるので、コスト的に大勢は無理ってことなのかもしれませんね。
それにしても、こんなに面白いものが、1回だけの公演というのは、本当にもったいないと思います。
どの公演もですが、さんざん稽古を重ねても、公演は1回、多くて2回というのは、ほんとうに切ないものがあります。
  • posted by セバ@宜野湾 
  • URL 
  • 2010.02/25 18:48分 
  • [Edit]

Re: No title 

こんにちは。面白かったですよね。
東京の公演は「沖縄芸能の今、そしてこれからⅡ」というタイトルです。
沖縄公演の雰囲気だと、格調の高さを目指す琉舞と敷居の低さを強調する組踊という、漠然と感じている傾向を、反映する公演になりそうです。

公演が1、2回しかないというのは、本当にもったいないですよね。

でも、その原因?は私たち観客の責任もあると思います。劇場に足を運ぶ沖縄芸能ファンはどのくらいいるのでしょうか。たとえば、国立劇場おきなわの自主公演の観客動員は年間1万1千人台(公演収入からの試算)だと思います。貸公演と合わせても国立劇場おきなわに足を運ぶ人は、述べ3万人くらいかなと推測します。狂言の茂山家の公演を見る人は、年間25万人といいますから、少しさびしい気がします。

ところで、全国のクラシックファンは500~600万人といわれています。全国の人口の4~5%でしょうか。そのくらいの割合で沖縄芸能のファンをつくれれば、沖縄県民だけで5万人程になります。なんとかなる数字だと思います。

変な算数をしてしまいましたが、要は、私たち観客があと1回多く公演に(国立劇場に限らず)足を運べば、上演回数も増やせるのではないかということです。

> いやあ、いいものを見たなーと、ずっとニマニマしていました。
> 初演の頃は沖縄に来たばかりで、こんな世界があることもまだまだ知らず、したがって華やかなじゅり馬を見ていないままなのが、残念です。
> 今回は東京公演があるので、コスト的に大勢は無理ってことなのかもしれませんね。
> それにしても、こんなに面白いものが、1回だけの公演というのは、本当にもったいないと思います。
> どの公演もですが、さんざん稽古を重ねても、公演は1回、多くて2回というのは、ほんとうに切ないものがあります。
  • posted by 亀千代 
  • URL 
  • 2010.02/27 01:10分 
  • [Edit]

ひんぎれ 

花道が無かったのが本当に残念です。
シチサンで踊り鳥屋へ入っていくシマ子と佐和子が
強烈な「ひんぎれ」だったので…。
あくまでこれは噂ですが、
東京公演では花道が使えないから
沖縄公演でもそれにあわせた演出が
なされたとかどうとか…。
ユイユイをやらなかったのももしかしたら
東京公演を見据えてのことだったのかもしれませんね。
  • posted by ぽっぽ 
  • URL 
  • 2010.03/04 09:26分 
  • [Edit]

Re: ひんぎれ 


その噂、使えないのか、使わないのかわかりませんが、
東京公演に合わせたという話は、ききました。

> ユイユイをやらなかったのももしかしたら
> 東京公演を見据えてのことだったのかもしれませんね。

予算の関係なんでしょうね。ユイユイの主なメンバーは
翌日に東京で舞台をしていたので、そっちが忙しかった
ということで、合点しましょう。

それにしても
<おきなわ芸能の今、そしてこれからⅡ>
というタイトル、良くつけましたね。
個人的には、格式重視の舞踊と敷居の低さをアピールする組踊
というのベクトルや、家元・世襲制の流れが強まっているような
沖縄芸能の現在・未来を掬いあげているように思います。

東京公演、そろそろ初日が終わった頃でしょうか。
チケットは、余裕があるようなので行きたかったんですが・・・。

  • posted by 亀千代 
  • URL 
  • 2010.03/06 17:15分 
  • [Edit]

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